存在の継承



     優しい言葉も 慰めも 笑顔すらもいらない
     夢なら誰にも憚れることなく逢えるけど
     目覚めて手が風を掴むのなら ただ虚しいだけ
     ふわと漂うようなおぼろげな意識の大海
     惹かれ合っていれば出逢うと信じていた

     
     あれは贈り物のような時間だった・・・・・・
     油天草の花詞を知っていますか? 
     ――私は永遠にあなたのもの
     心の一部とはいえ ずっと占拠し続けるこの思い
     未だに胸の内にあるこの感情は 苦しみかそれとも悲しみか

          
     月光を唇で受け 喉の奥へと流し込む
     そして口唇に乗せるはあなたの名前
     私に向けられていなくても あなたが笑っていられればいい
     思われようなんて そんな贅沢は望まない
     憂うような為にならない優しい偽りはもういらない 
     つながれ記憶され続けていく現実
    

     生涯これ以上の恋をする事はあるのだろうかな
     次の恋で心を乱して 狂うほど身を焦がせば
     この痛みもやがては幻想
     ――そう思える時が来るならば
     決別する事も悪くないのかもしれない


     幾度忘れてもあなたに恋をする
     思い出になった場所であなたの幻影を捜す
     言葉にならない想いが疼く
     傷はもう、塞がった 筈
     ならこの痛みは一体何?
 
    
     一歩踏み出せないでいるのは この先を足が知っているから
     だから急かさないで
     十六夜月のように誰かが待っているわけじゃないのだから
     太陽に背を向けるけれど 闇になりきれない月
     それが自分


     この箱庭にたくさんの忘れ花を植えてみようか
     もう想う事に飢えないように
     二度と手に入らないものを望まないように
     効果がなければ余計苦しいだけだけれど
     そうまでしないとすがりつかれた感情に押し潰されそうで


     最後に笑うのは一体誰なんだ?
     袖にされた気持ちはゆくゆくは褪めるものなのか?
     風化するならしてほしい、この身ごと
     だから嘘でもいいから 嫌いだと言って
     少しでも私を哀れんでくれるのなら・・・・・・